意匠の国際登録制度

 2015年5月13日より、「意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定」(以下「ジュネーブ改正協定」)に基づき意匠の国際出願・登録制度が、日本でも利用できます。

I.意匠の国際登録に関するハーグ協定について

 「意匠の国際登録に関するハーグ協定」は、パリ条約の特別取極として1925年に締結されました。この協定は、複数回改正されており、ロンドン改正協定(London Act:1934年)、ハーグ改正協定(Hague Act:1960年)、ジュネーブ改正協定(Geneva Act:1999年)の3つの改正協定が存在します。
 
この3つの改正協定のうち、ロンドン改正協定は2010年に凍結されたため、現在はハーグ改正協定及びジュネーブ改正協定のみが機能しています。
 
なお、新たに加盟する国は、最新の改正協定であるジュネーブ改正協定にのみ加入することができます。

II.ジュネーブ改正協定について

 ジュネーブ改正協定は、世界知的所有権機関(WIPO)が管理している協定で、意匠の国際登録について定めている国際条約です。

 ジュネーブ改正協定の制度を利用することにより、複数国に対して意匠出願を一括で行うことができ、また、複数国での意匠権を一元管理することも可能となります。

III.加盟国

 ジュネーブ改正協定には、2015年6月時点で以下の49ヶ国が加盟しています。
 アフリカ知的財産機構(OAPI)、アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ボツワナ、ブルネイ、ブルガリア、クロアチア、デンマーク、エジプト、エストニア、欧州共同体(EU)、フィンランド、フランス、グルジア、ドイツ、ガーナ、ハンガリー、アイスランド、キルギスタン、ラトビア、リヒテンシュタイン、リトアニア、モナコ、モンゴル、モンテネグロ、ナミビア、ノルウェー、オマーン、ポーランド、モルドバ、ルーマニア、ルワンダ、サントメ・プリンシペ、セルビア、シンガポール、スロベニア、スペイン、スイス、シリア、タジキスタン、マケドニア、チュニジア、トルコ、ウクライナ、韓国、日本、アメリカ

 ハーグ改正協定のみに加盟しているのは、以下の15ヶ国です。
 ベルギー、ベリーズ、ベニン、コートジボワール、北朝鮮、ガボン、ギリシャ、イタリア、ルクセンブルグ、マリ、モロッコ、オランダ、ニジェール、セネガル、スリナム

IV.手続きの流れについて

 ~ジュネーブ改正協定の制度を利用した際の大まかな流れ~
 
(1)国際出願
出願人がWIPO国際事務局に対して出願
(2)方式審査
WIPO国際事務局が方式審査

(3)国際登録

WIPO国際事務局が管理する国際登録簿にその国際出願の内容を記録
(4)国際公表
所定期間経過後、国際公表
(5)各指定国で登録又は拒絶
国際出願時に指定した各指定国から拒絶の通報がなされなかった場合、その指定国において意匠権が登録
(6)存続期間の更新
国際登録の存続期間は、国際登録から5年間で、以後5年毎の更新により15年まで延長可能

~各手続における注意点~

国際出願に関して
 WIPO国際事務局に対して直接行う直接出願、若しくは、自国の官庁を経由して行う間接出願のどちらかを選択することが可能です。

国際登録に関して
 国際登録された意匠は、国際登録日から指定国の官庁に出願されていた場合と同一の効果を受けることができます。

国際公表に関して
 国際公表される期間は、国際登録から原則6ヶ月後(出願人の請求により国際登録後速やかに)とされていますが、出願人が請求することで国際出願日から30ヶ月を限度に公表の繰延べが可能となります。
 但し、公表繰延べ期間を30ヶ月より短い期間で設定している締約国や公表繰延べ制度を採用していない締約国を指定国に含めて出願した場合には、最も短い公表繰延べ期間の満了後に公開されるため、公表の繰延べが認められない場合もあることに注意が必要です。

指定国での登録又は拒絶に関して
 国際公表後、無審査国では6ヶ月、実体審査国など締約国が宣言をした国は12ヶ月以内に国際出願時に指定した官庁から拒絶の通報がなされなかった場合、その指定国において意匠権を登録することができます。

存続期間の更新に関して
 国際登録の存続期間は、5年毎の更新により15年まで延長できます。また、指定国の国内法が15年を超える存続期間を定めている場合は、国際登録を更新することにより、その指定国の国内法の保護期間と同一の期間めで延長できます。
 なお、更新の手続きは原則としてWIPO国際事務局に対して行うだけでよく、指定国毎に手続きを行う必要はありません。