【国内】パロディウォッチの審決取消訴訟、フランク三浦が勝訴

 4月12日、スイスの高級腕時計FRANCK MULLER(フランクミュラー)のパロディ商品である「フランク三浦」(「浦」の字は右上の「、」を消去して成るもの。以下同。)の商標登録権者である株式会社ディンクスが、この商標登録(商標登録第5517482号)を無効とした特許庁の審決を取消すように求めた訴訟(平成27年(行ケ)第10219号 審決取消請求事件)の判決が知財高裁で下されました。知財高裁は、「フランク三浦」と「フランクミュラー」とは商標として非類似のため、フランク三浦の商標を無効とした特許庁の審決を取消すとの判決を下しています。

 「フランク三浦」は、「裏ブタやベルトの傷などは当たり前のように付いております」、「ありとあらゆる水気や空気中の水分にすら耐えられません」、「一日の遅れや進みが大きい場合は電波時計を参考に毎日時刻合わせしてください」などと商品説明がなされ、「ウチはとことんチープにいくのがコンセプト」との方針のもと、パロディウォッチとして店頭及びインターネット上などで販売されているものです。

 本訴訟は、フランクミュラー側が請求した商標登録無効審判(審判番号:無効2015?890035)を受けて、特許庁がフランク三浦の商標登録を無効にしたのに対して、フランク三浦側がこの特許庁の取消審決を取り消すために審決取消訴訟を起こしたものです。

 本訴訟において、知財高裁は、「両商標を一連に称呼するときは、全体の語感、語調が近似した紛らわしいものというべきであり、称呼において類似する」と称呼の類似性は認めたものの、外観及び観念については明確に区別できると判断しました。そして、知財高裁は、「称呼の類似性のみによって商標を識別し、商品の出所が判別される実情があると認めることはできず、称呼による識別性が、外観及び観念による識別性を上回るともいえない。」とし、商品の出所につき誤認混同を生ずる恐れはないと判示しました。

 また、知財高裁は、出所の誤認混同について、原告が本件商標を付した時計の販売を開始したのは、本件商標の商標設定登録以後であること及び原告商品の形態を示す証拠が本件商標の登録査定時よりも後の原告商品の形態を示すものであることから、「原告が被告商品と外観が酷似した商品に本件商標を付して販売しているとの(特許庁側の)主張は、本件商標の登録査定時以後の事情に基づくものであり、それ自体失当である」としつつ、「仮にこの事情を考慮したとしても、観念及び外観において大きな相違があること及び被告商品の多くが100万円を超える高級腕時計であるのに対し、原告商品が4000円から6000円程度の低価格であることや、原告商品が被告商品とは指向性が全く異にするものであるため、取引者や需要者が双方の商品を混同するとは到底考えられない」と判示しました。

 なお、知財高裁は、「商標法第4条1項15号で規定している、フリーライド及び表示の希釈化(いわゆるダイリューション)の防止については、商標の自他識別機能を保護することによって、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものの、飽くまで同号に該当する商標の登録を許さないことにより、上記の目的を達するものであって、ただ乗りと評価されるような商標の登録を一般的に禁止する根拠となるものではない」としています。

 本判決を受けて、フランクミュラーの代理人は、「コメントは差し控える」とし、フランク三浦側は、「おもちゃの時計と高級時計を混同するわけがない。正当な判決でホッとしている」とコメントしています。